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Journal no. 22

オーバーフロー (2001年4月23日)

 やっぱり思ったとおりになった。

 担当している講義の『科学と技術(害虫とたたかう)』は毎年受講者が多くて苦労してきた。去年は月曜の1時限目にもかかわらず500人を超えた。そんなに甘くしているつもりはない(去年の単位取得率75%)が、なぜか受講者が多い。

 その授業が今年は水曜の3時限目に置かれたのでどうなるかと危惧していたのだが、予想通りになった。先週の授業では、500人入る教室にまったく入り切らない数の受講者が集まった。部屋の後ろに立つだけでは入りきらず、通路全部に広がった。当然、授業できる状況ではない。

 このような事態は決して初めてのことではない。500人教室はこの大学最大の部屋であり、代わりの場所はない。これまでの例では、超過人数が少なければ放置して出席者が減るのを待った。多い場合は、仕方がないので2つの教室に分割して、ビデオを見せたりグループワークをしながら講師が二つの教室を行ったり来たりするというやりかたをとってきた。だがあいにく私の授業ではビデオをほとんど使わないし、グループワークをする準備はなかった。

 苦しい決断を強いられて私がとった方策は、授業に出なくても十分勉強できるだけのものを用意するから、出席しなくてもいいと思う者は自発的に退室してほしい、とお願いすることだった。私が授業に使っている講義ノートを公開し、さらに講義中の音声を録音したテープを貸し出すことで、出席した場合と同じだけのものが自習でも得られるように配慮しようということだ。そして成績は2回のレポートと期末試験で判定する。まったく独断でやったので誰かから文句がでるかもしれないのだが、それ以外にやりようを思いつかなかった。もちろん、こんなやり方でいいとは思っていない。しかし、登録人数に上限が設けられていない以上すべての受講希望者に受講する権利があり、それを確保する義務が大学にある。なにも手を打たないわけにはいかなかった。制度の欠陥を担当教員が尻ぬぐいせざるを得ない。

 授業の現場に出席していない者に試験等の結果だけで単位を与えることには、強い抵抗を感じる教員が多いだろう。私も、ノートを見るだけで試験に通るような授業はしたくないと以前ここに書いた(LINK)。受講者と顔を合わせ、対話することで学習を促すというやり方にこだわりたいのは当然だ。しかし、100人を超えると対話は難しくなる。まして500人、1000人を相手では、ほとんど不可能だ(ただし前述のグループワークはそれを可能にするのかもしれない。勉強せねば)。

 それに、もしかしたらこれは、これからどんどん増えてきそうな、インターネットによる遠隔授業を考えるいい機会になるかもしれない。場所や時間を気にせずに好きなように学習してもらい、提出物や試験で単位を認定する。それが可能なら、なにも教室という入れ物に制限されなくてもいいわけだ。

 とにかく今は、配付できる程度に講義ノートを整えなくちゃ。こりゃけっこう大変かも・・・。

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