2018年秋期 環境問題概論
期末試験 問題と解答


1.世界の海面が上昇している。その理由として以下の記述のうち正しいものの記号に○をつけよ(複数可)。
(正答1つ+5点、誤答1つ-5点)
a. グリーンランドの氷が溶けている  b. 高山の氷河が溶けている  c. 南極の氷が溶けている
d. 北極の氷が溶けている  e. 海水が膨張している  f. 海底が膨張している
g. オゾン層が減少している  h. 海水が酸性化している

正解:a, b, c, e

注:誤答が正答より多くても最低は0点とする。

2. 地球温暖化を進める要因として考えられるのは次のうちどれか。あてはまるものの記号に○をつけよ(複数可)。
(正答1つ +5点、誤答1つ -5点)
 a. CO2濃度の増加  b. ダイオキシン濃度の増加  c. メタンガス濃度の増加
 d. 塩素ガス濃度の増加  e. 海面の上昇  f. 森林伐採
 g. 氷河の後退  h. オゾン層破壊  i. 石油の燃焼

正解:a, c, f, i

注:誤答が正答より多くても最低は0点とする。

3. 16世紀の学者パラケルススによる毒物学の基礎は「この世に毒でないものはない。毒か薬かは[(1)]が決める」という考え方である。(1)に入る言葉を書け。(5点)

正解:量

4. 海に流出したごく低濃度の汚染物質が、大型の魚類や鳥類・哺乳類の体内から高濃度で検出されることがある。このような現象をなんというか。どのような特徴を持った化学物質がこうした現象を起こしやすいか。(現象名 5点、特徴 5点)

正解:現象名=生物濃縮、特徴=脂溶性、難分解性、高蓄積性

5. 地球に住む人間の数はすでに70億人を超えている。これだけの数の人間が日々CO2を吐いているのに温暖化には関係ないという。その理由を説明せよ。(10点)

回答例:人が吐くCO2は、食べた食糧が分解されたものであり、その食糧はすべて元をたどれば植物の光合成によって大気中のCO2が形を変えた有機物である。つまり、植物が吸収したCO2が人の口から出ていくだけであり、吸収した以上のものが排出されることはないので増加することはない。

【コメント】他の排出に比べ微々たるものだから、という回答が多かったが、そうではない。また、人が吐いたCO2は植物が吸収してくれるから、というのは因果が逆であり正しくない。

6. 原発の出力は1基およそ100万kW。家庭用の太陽光発電は1基3-5kWだから、5kWのものを20万戸の屋根に設置できれば、原発1基分の電力を置き換えられる、と考えるのは正しいだろうか。説明せよ。(10点)

回答例:正しくない。原発は稼働すれば24時間連続で毎時100万kWhの電力を発電できるが、太陽光発電は太陽がちょうどいい角度で照らす1日数時間しか定格出力で発電できず、当然夜や曇り・雨の日は発電できない。5kWx20万戸では最高で100万kWhなので、置き換えるには全然足りない。

【コメント】原発の電気と太陽光発電の電気は全然違うものである、と回答した人が複数いた。どういうことだろう?

7. 短期間で大きく育つ植物ケナフは地球温暖化防止になる、ということで、全国の小学校でケナフを栽培する計画が持ち上がったとする。この計画が本当に温暖化防止に多少なりと効力をもつか、論評せよ。(10点)

回答例:ケナフはどんなに大きく育っても冬には枯れてしまう。枯れてゴミとして焼却などされるのであれば、育つとき吸収したCO2も再び放出されてしまうのでCO2削減にはならない。収穫されて紙などの原料とされ、それがたとえば非持続的な森林伐採を減らすことになるのであれば、一定の効果を持つと言える。

8.大量生産−大量消費−大量廃棄という一方通行の社会は、いずれ大きな問題に直面し継続不可能となる。どのような問題が起きうるか、2つの側面を挙げて説明せよ。(10点)

回答例:いずれ原料とする資源が枯渇するか、あるいは膨大な廃棄物が積み上がり処理不能となる。どちらが先に起きるにせよ、継続不可能となる。

9. すべての廃棄物がリサイクルされるようになれば、完全な循環型社会になる。そのような社会は、人々の協力とリサイクル技術の進歩次第で実現可能だろうか。解説せよ。(10点)

回答例:リサイクルは、現状ではほとんどの場合質の低下するダウンサイクルであり、ゴミの発生を先延ばししているだけである。またリサイクルには必ずエネルギーが必要であり、そのエネルギーを産出するのにさらに廃棄物が出ることがほとんどである。この二つの問題を解決しなければ、人々の協力があっても完全な循環型社会にはなり得ない。

10. コンビニの弁当製造会社の多くは、合成保存料を一切使用していないことを売りにしている。
(a) この行動は、予防原則と予測原則、どちらに該当するか。(5点)
(b) 保存料を排除したことで、だれにとってどのようなメリットがあったのか、そのことでだれにとってどのようなデメリット(リスク)が発生したか。考えられることをそれぞれ答えよ。(10点)

回答例:(a) 予防原則 (b)購入する消費者にとっては安心を得られるメリットがあるが、賞味期限が短くなることで廃棄が増えるので、コンビニと社会にとってはデメリットを伴う。

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2019. 3. 5.

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