小澤祥司著『メダカが消える日』(岩波書店 2000年) 読了。
かつてどこでもあたりまえに生息していたメダカが、なぜ絶滅危惧種になりはてたのか、そして今どのような取り組みが必要なのかを書いた本。
著者はあえて言う。「メダカを保護してはいけない」。大切なのは、メダカが自然に生息できるような環境を取り戻すこと。生きる場所がないのに飼育したものを放流するのは無意味で残酷。また少しでも生き残っているところに放流などすれば、こんどは地域固有のメダカに他地域の遺伝子を持ち込み遺伝子汚染を引き起こす。安易なメダカ愛護は百害あって一利なし。全国の自然保護活動者は肝に銘ずるべし。
トキやコウノトリでも同じ。そして、かつての農村環境にいかに多くの生物が依存していたかを実感。今わたしたちが「自然」と呼んでなつかしがっているものの多くは、じつは原生林などではなく人の手の入った半自然(二次的自然)や水田のなかにこそあった。そうした環境の多くが失われたが、再生の可能性はまだある。取り組んでいる人たちが全国にいる。タイトルに反し、メダカは消えはしないだろう。
ひたすら危機をあおるばかりで『「夢も希望もない環境問題教育」は早くやめにして、「夢と希望を与え、創意工夫を生み出す環境教育」へと、転換していかなければならない。』 (p.188)という言葉がグサリ。そうだよな。来年度の講義、なんとかしなきゃ、と反省。