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Journal no. 34

シンデレラと就職 (2002年4月3日)

 大学4年の秋、大学祭の駅伝大会に出場した。チーム名は「シンデレラはサラリーマンになりたくない!」だった。私が命名した。

 シンデレラというのは、所属していた同好会が大学祭でやったディスコの名前でもあったのだが、そのこととは別に、まもなく卒業する自分と12時になると魔法が消えるあのシンデレラを重ねていた。つまり、就職したくなかったのだ。

 今、大学教員となって毎年3月に就職していく卒業生たちを見ていると、えらいなぁと思ってしまう。自分にはできなかった。就職活動を一度もしないまま、私は大学院に進学した。

 大学院に2年居て修士卒で就職する友人も多かったが、私はしなかった。代わりに、米国の大学の大学院に留学して6年過ごした。留学の動機に、社会に出て現実に直面することから逃げたいという気持ちがあったことは、今から思えば否定できない。苦しいこともあったが、しょせんは学生の身分。楽しいアメリカ生活を送った。

 博士号を取りいよいよ学生ではいられなくなったとき、幸運にも国の研究機関で研究できる期限付の特別研究員という身分を得た。特定の機関に居候するが、給料は別の所から出ているのでしばられるものがほとんどない。好きなことを自由に研究できる気楽な立場だった。その身分の期限が切れようというときに、今の職についた。

 だから私はいわゆる普通の企業の職についたことがないし、ずっとこれまで学生みたいな生活をしてきた。おまけに大学教員というのは、基本的に人から指図されずに自分の裁量で自分の好きなことができる不思議な職業だ。好きも嫌いもなく、課されたノルマを果たすべく一所懸命に働く人達には畏敬の念を抱かずにいられない。今の職をクビになったら、私など外の世界では何の役にも立たないのはまちがいない。

 卒業生のみんな、身体を大事にして、元気でいてください。

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 大学のシステム更新に伴い、アップのタイミングが遅れました。

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