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Journal no. 31

ティーチング・アシスタント (2002年2月27日)

 前回のジャーナルで、留学していたアメリカの大学で200人程度の生物学のクラスに10人あまりのTA(ティーチングアシスタント)が関わるというようなことを書いた。ずいぶん多くのTAが関わるのだと思われるかもしれないので、説明しておく。

 ただの講義科目であったなら、200人のクラスといえども10人もTAをつけることはない。1回生向けの生物学の授業には、講義に加えて実習がついている。実習はひとグループ20人前後に分割して行なうので、そのグループをそれぞれ分担するためにTAが10人もいるわけだ。

 講義をするのは教授、実習にあたるのはTA、さらにそのTAたちを束ねて実習内容を設定・指示するインストラクターと、実習材料を整える補助員、というふうに、ひとつの授業を非常に多くのスタッフが支えているわけだ。おかげで、担当教授の負担は限定されている。

 当時TAの給料は1ヶ月600ドルあまりで、ぜいたくをしなければ十分それで暮らしが成り立った。多くの大学院生がTAで生活しており、あと奨学金を得ている者などもいたが、学外でバイトをしている者や親の金で生活しているものはいなかった。私自身、留学したことで日本で大学院にいるより安くあがったように思う。

 TAの仕事は単なるアルバイトではない。大学院生の多くは修了後大学教員になるが、TAはそのためのよい訓練になる。学生と教員の間に立って学生の指導を経験することで、学生の側に立てる教員になれる気がする。

 考えてみれば日本の大学教員の大部分は、研究者としてのトレーニングは受けているが教育者としてのトレーニングは受けていない。教員免許がなくても大学教員にはなれる。それを補うためのFD活動(Faculty Development: 教員の教育能力開発)というのも最近よく取り上げられているが、これからの教員を育てるためには、大学院生のTA制度を教員養成という面からもっと考えるべきだろう。

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