2016年度 自然科学(生物学1)授業概要

講義計画 |  参考図書


授業で使用したファイルを探しに来た人へ

授業でパソコンから使用しているPowerPointファイルや配付資料の原稿は受講者に公開されていますが、そのファイルはこのホームページ上にはありません。使用している資料の著作権の問題などがあるので、大学LAN内の教材サーバに入れてあります。情報センターの自習室などに行って、「マイ・コンピュータ」の中に見える「Lesson (S:)」を開いて、私の名前のフォルダ(iwao)の中を探してください。印刷もできますが、くれぐれも紙資源の節約に努めてください。


イン・クラス・レポートについて

講義4〜5回に1回の割合で、授業時間中に出題してその場で書いて出してもらうイン・クラス・レポートを行います。その時のテーマについて数回分の授業を振り返って理解を確認してもらうためのものです。出題テーマは当日以降に教材サーバとここに公開します。やむを得ない理由で当日欠席したことが客観的に証明できる場合は、翌々回の授業時までに提出されれば減点なしとします。それ以降、あるいはやむを得ない理由が示せない場合でも提出されれば受け取りますが、点数は半減します。


第3回イン・クラス・レポート(6月10日実施)

「どうして鳥ではオスが派手な羽をしていて踊ったり歌ったりするんだろう?」という中学生からの質問に、授業内容をふまえて回答してください。筋道立てて、背景から説明すること。オスとは何か、メスとは何か/その違いから必然的に生じる「争う性」/どうやって配偶者を得るか/なぜ鳥はオスが派手か、という具合に。用紙はこちらを印刷して使用。やむを得ない事情がある場合は6月17日の提出まで減点なしとします。


第2回イン・クラス・レポート(5月24日実施)

洞窟の暗闇に住む動物には、体の色素を失い白や透明のものが多い。黒っぽい祖先から自然選択によって進化してきたと考えて、進化の道筋を具体的に説明せよ。また、自然選択の結果でない場合の進化の道筋を説明せよ。「いらないから退化した」では説明にならないので注意。用紙はこちらを印刷して使用。やむを得ない事情がある場合は5月31日の提出まで減点なしとします。


第1回イン・クラス・レポート(4月26日実施)

「生命って、誕生してからどんなふうに進化していったんだろう?」という中学生からの質問に、生命誕生以降からカンブリア大爆発にいたるまでに起きた重要な出来事を3つ程度挙げて、その出来事が生物界をどう変えたか解説してください。用紙はこちらを印刷して使用。やむを得ない事情がある場合は5月10日の提出まで減点なしとします。


第1週の休講について

第1週4月5日と8日の2回をいきなり休講にしてしまいました。申し訳ありません。最悪のタイミングでインフルエンザにかかってしまいました。いずれ補講をさせてもらいますが、おそらく火曜5限に入れることになると思います。他の授業との兼ね合いで出席できない人もいると思いますので、欠席が致命的にならないよう配慮します。


講義計画

【講議概要】

 バイオテクノロジーの台頭と環境問題への注目により、生物学は21世紀の社会でよくも悪くも中心的な位置を占めることになる。遺伝子や生態系に関する正しい理解がなければ、さまざまな社会問題に正しく対応し判断をくだすことは難しい。この時代に対応するためにも、生物というものの基本を正しく理解しておいてほしい。

 生物の基本、それはすべての生物が37億年にわたる生命の進化の産物であるということ。進化という現象を抜きにして生物のいかなる側面も語ることはできない。にもかかわらず、現在の高校までの理科教育では進化をまともに扱うことがなく、結果として進化を正しく理解している者はきわめて少ない。

 この授業では、進化とそのメカニズムの正しい理解を目標とする。その上で、進化を軸にして生命現象のいくつかの重要な側面について概説する。

【学習目標】

 1.この地球に生息する多種多様な生物たちの命の不思議、生き方の不思議、生物同士の関わりの不思議に興味を持つ。2.生物が進化するそのメカニズムについて人に説明できる。3.講義で取り上げるいくつかのトピックについて、人にわかるように説明できる。

【到達目標】

以下の点が説明できるようになることを到達目標とする。(到達目標リストのPDF版はこちら

  1. 生命を構成する基本的な元素や有機物、基本的な構造について説明できる。
  2. 生物が呼吸すること、光合成することの意味を説明できる。
  3. 現存する生物が構成する3つの「界」とそこに属する主な生物について説明できる。
  4. ミトコンドリアと葉緑体の細胞内共生について説明できる。
  5. 多細胞生物の誕生時期と、単細胞生物が多細胞化することの意味を説明できる。
  6. 地球の歴史の中で、生命誕生、光合成、多細胞化、カンブリア紀の爆発的多様化、恐竜絶滅、人類誕生などについて、これらの出来事の順番と、おおよその相対的な時期がわかる。
  7. 生物の絶滅と多様化の関係、多様化が促進される要因について簡単に説明できる。
  8. DNAを構成する物質(塩基)と、アミノ酸、タンパク質の関係を説明できる。
  9. 突然変異がその生物の表現型に影響する場合としない場合の違いを説明できる。
  10. 遺伝子が全く同一でも、環境によって個体の形質は異なってくることを説明できる。
  11. どのような生物の変化が「進化」なのか説明できる。
  12. 自然選択によって進化が起きる条件を具体例に沿って説明できる。
  13. 進化に関するありがちな誤解について、それぞれ何がどう誤りか説明できる。
  14. 生物の進化において偶然の力がどのようなときになぜ影響をもつか説明できる。
  15. 有性生殖が主流であることの謎と、それに対する「赤の女王」仮説の意味を説明できる。
  16. オスとメスの形態や行動が異なるものになる進化の力を説明できる。
  17. オスとメスの比率がどのような原理で決まるか説明できる。
  18. 利他行動がどのような場合に進化すると考えられるか説明できる。
  19. ハチやアリで真社会性が他の生物より多く見られる原因を説明できる。
  20. ヒトの利他行動は他の生物の利他行動とどこがちがうのか説明できる。
  21. 絶滅に瀕した生物が陥る「絶滅の渦」について説明できる。
  22. 生態系を進化の観点で説明でき、あわせてなぜ外来種の存在が生態系にとって有害なのか説明できる。
  23. ヒトの起源と分布拡大について簡単に説明できる。

【講議計画】

ときおり時事問題なども絡めながら、おおむね以下のテーマを扱う予定

・生命の起源
・生命の分化と共生
・進化の大爆発
・DNA
・進化のメカニズム
・自然選択
・進化と突然変異
・偶然と必然
・遺伝子組み換え
・性の進化
・性差の進化
・性比の進化
・近親交配
・血縁選択
・真社会性の進化
・ゲーム理論と社会性
・生物多様性保全
・人類の進化

【成績評価の方法】

イン・クラス・レポートをすべて提出した上で、試験で6割程度得点すれば単位を与える。当日やむを得ない理由により欠席した受講者は、理由を客観的に示す証拠を添えて1週間以内に提出すればペナルティなしに受け取る。やむを得ない理由のない場合や1週間を過ぎた場合も受け取るが、点数は半減する。


【教科書】

なし

【参考書】

酒井、高田、近「生き物の進化ゲーム」 共立出版 1999

桑村哲生 『生命の意味』 裳華房  2001年

長谷川眞理子『進化とはなんだろうか』岩波ジュニア新書 1999年

ワイナー『フィンチの嘴』早川書房 2001年

長谷川眞理子『クジャクの雄はなぜ美しい?』紀伊國屋書店 1992年

ドーキンス『利己的な遺伝子』紀伊國屋書店 1991年


その他の参考図書

金子隆一「大絶滅。」実業之日本社 1999

長谷川真理子「雄と雌の数をめぐる不思議」中公文庫 2001

M. リドレー「ゲノムが語る23の物語」紀伊國屋書店 2000

鷲谷いづみ「生態系を蘇らせる」NHKブックス 2001

鷲谷いづみ「サクラソウの目」地人書館 1998

鷲谷いづみ、矢原徹一「保全生態学入門」文一総合出版 1996

山岸俊男「 社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで 」PHP新書 2000

長谷川寿一・長谷川眞理子『進化と人間行動』東京大学出版会 2000


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2016. 5. 5.