以下の各文章を読んで、この授業の講義内容に照らして間違いやつっこみどころがあればそれを指摘して正しい内容を記せ。指摘すべき箇所が複数ある場合、すべて指摘すること。間違いがない場合は○を記入せよ。
1.地球が他の惑星と違うのは、地球には酸素があったということである。地球大気に酸素が大量に存在したからこそ地球に生命が誕生したのだ。
[回答例]原始地球の大気にほとんど酸素はなかった。嫌気状態で生命は誕生し、シアノバクテリアが光合成を始めるまでその状態は続いた。
→ [部分点] 元々酸素はほとんどなかった(5点)、シアノバクテリアが酸素を作った(5点)、生命は宇宙から来たという説もある(2点)、酸素ではなく水があったから誕生した(5点)、地球には水があり水の中に有機物が大量に存在したからこそ生命が誕生した(10点)
2.なぜ生物は呼吸するのか?それはどんな生物でも基本的な栄養素として酸素が必要だからである。
[回答例]生物学で言う呼吸とは、有機物を分解してエネルギーを取り出す過程のこと。酸素呼吸であれば、酸素を使って有機物を分解する。酸素は栄養素ではない。
→ [部分点] 酸素を必要としない生物もいる(5点)、どんな生物でも呼吸で有機物を分解してエネルギーを得る必要があるから(10点)、酸素は栄養素ではない(3点)、酸素をエネルギーに変えている(3点)
3.DNAは20種のアミノ酸とタンパク質からできている。
[回答例]DNAは糖とリン酸と4種の塩基からできている。
→ [部分点] 塩基(4点)、4種の塩基(8点)、「4種」と「塩基」があるが別文脈(6点)、糖と塩基とリン酸からできている(10点)、A,T,G,C(3点)
4.あーあ、突然変異が起きて、すごく頭のいい人間に進化しないかな。
[回答例]進化とは、生物の集団における世代を超えた遺伝的な変化のこと。個人においてその一生の間におきる変化は進化とは言わない。
→ [部分点] 頭が良くなることだけでなく悪くなるのも進化である(2点)、それ(突然変異だけ)は進化と呼ばない(3点)、変化するとすれば進化ではなく成長である(7点)
5.頭の良さにはばらつきがあり、頭の良さは遺伝し、頭の良い人はいい仕事について成功を収める。したがって自然選択により人類はだんだん頭が良い方向に進化する。
[回答例]ばらつきと遺伝はいいが、頭の良い人が適応度が高い、つまりそうでない人よりたくさん子孫を残す、ということは考えにくい。したがって、自然選択による進化の3条件のうちひとつが成立しないので、上記のような進化は起きない。
→ 頭の良さは獲得形質だから遺伝しないので進化しない(10点)、根拠なく遺伝しない だけなら0点
6.クジャクのオスが派手な尾羽を持っているのは、オス同士で羽比べ競争をし、大きくきれいな方が勝ってメスにプロポーズできるからである。
[回答例]オス同士で比べて競争する「オス間競争」ではなく、あくまでメスが個別のオスを査定して選ぶ「メスによる選り好み」によって進化してきた。
→ [部分点] メスにアピールするため(5点)、大きい方がメスに選ばれる可能性が高い(10点)
7.メスが多い方がたくさん子を残せるのは当たり前であるのに、オスとメスの数がおおむね1:1になっているのは、遺伝的制約により性比の進化に限界があるからである。
[回答例]オスが多いときはメスであることが有利に働き、メスが多いときはオスであることが有利になる。個体にとって有利な性を産むことが選択され、結果としてほぼ同数に収束するのである。
→ [部分点] 自然選択の結果1:1が遺伝子を残すのに一番よい比率(8点)
8.アリの巣には、もっぱら巣を防衛するオスの働きアリと、女王の子を育てるメスの働きアリがいて、全員が自らを犠牲にして種の繁栄のために尽くしている。
[回答例]働きアリはすべてメスであり、妹である新女王(血縁度3/4)を通じて自分の遺伝子が次世代に伝わるという利己的な利益のために働いている。
→ [部分点] 働きアリはすべてメス(5点)、子には1/2、妹には3/4の遺伝子が伝わるので利他的に働く(5点)、自らを犠牲にではなく自分のために行っている(理由なし)(5点)
9.絶滅の渦とは、生態系の中の1種が絶滅に向け減少し始めると、まわりの他の種も多くがそれに引きずられて減少していくことをいう。
[回答例]ある種の集団の個体数が一定以下に減少すると、近親交配による近交弱勢、人口学的変動、環境変動などの影響によりさらに減少する傾向に歯止めがかからなくなり、絶滅してしまうことをいう。
→ [部分点] ある種が減少し始めるとその危機から逃れにくくなること(5点)、+3つの要因のどれかが書かれている(8点)
10.ホモ・サピエンスは、ネアンデルタール人その他の人類から進化し、生物の中で最も進化した生物として地球に君臨し、他の生物を支配している。
[回答例]ホモ・サピエンスは、ネアンデルタール人と同じ祖先を共有し、多くの種の中で唯一生き残った人類である。現存するどの生物も、最初の生命から同じだけの時間かけて進化してきたのであり、ヒトがもっとも進化した生物というのは間違い。地球全体に広がった結果、他の多くの生物を絶滅に追いやることで、みずからの生存を危うくしている愚かな生物である。
→ [部分点] ヒトと自然は共存関係(5点)、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は別(3点)、ホモ・サピエンスも他の生物と同じように進化してきたのでもっともではない(5点)
【コメント】こちらの期待通りに答えるのは難しいにしても、もう少しできてほしかったんだが、どの問題もかなり正答率は低かった。問題の形式が意外だったようで。ちなみに、「…である」を「…でない」に書き換えただけでは回答と認めない。