1.次に挙げるのは授業で扱った物質その他の略称である。それぞれ何を意味しどんな環境問題に関係するものか簡単に説明せよ。(各5点)
(1) SOx
硫黄酸化物。大気汚染、酸性雨の原因物質。
注:硫黄酸化物だけだと3点、酸性雨だけでも3点
(2) PCB
ポリ塩化ビフェニール。1930年代に発明され燃えない油として重宝された塩素化合物だが、後に発ガン性などの毒性が発覚し使用禁止に。環境を汚染し、生物濃縮で海洋生物や人体を汚染。
(3) IPCC
気候変動に関する政府間パネル。地球温暖化に関する科学的知見を収集し発信する国連の組織。
注:気候変動枠組条約は1点、+温暖化で4点
(4) BOD
生物学的酸素要求量。有機物による水の汚染度を示す。
注:「生物学的酸素要求量」は正確でなくてもOK
(5) RoHS
有害物質規制。EUの指令で、鉛、水銀、カドミウムなどの有害物質を電気製品に使用することを禁止する。
2.地球温暖化問題について、「恐竜の時代には地球の気温は今よりもっと高かったのだから、少しくらい温暖化してもなにも問題ない。」という論の問題点を指摘せよ。(10点)
[回答例]地球の気温はその歴史の中で大きく上下しており、今起きている程度の温度変化もべつに珍しいことではない。しかし人類が文明を築きだしてからのここ1万年程度の期間は気温が非常に安定しており、今の温暖化はそこから大きく外れようとしている。つまり、地球にとってではなく文明社会にとって未経験の状況であるから危機なのである。
今の温暖化は人為的原因=3点、過去に例がなくスピードを落とすべき=5点、恐竜の時代は一定だが今は急速に上昇して変化が問題=3〜5点
3.「森林伐採は温暖化の原因であるから止めるべき!」という主張と、「温暖化防止のため森林資源をもっと活用すべき!」という主張は相互に矛盾しているように見えるが、双方の主張の汲むべき点をふまえつつ、温暖化防止のために森林をどう扱うべきか説明せよ。(10点)
[回答例]森林は炭素の貯蔵庫であり、元々森林だったところを伐採して農地その他に転用すれば、炭素の大半はCO2として放出され温暖化の原因になる。しかし、森林を育てて伐採し木材やバイオマスエネルギーなどとして利用し、跡地にまた植林して育てて活用する、というサイクルを持続すれば、カーボンニュートラルを維持しつつ資源を作り出すことができるので、枯渇性の資源を森林資源に置き換えれば温暖化防止になる。
伐採したら植える=2点、カーボンニュートラルが説明できていれば10点、伐採はCO2増加=3点
4.水は貴重な資源であり、世界的に見れば利用できる淡水が不足する傾向にあるが、日本で使用する水を節約しても水不足に苦しむ国の水が増えるわけではない。したがって日本にいる私たちに責任はないだろうか。説明せよ。(10点)
[回答例]作物を育てるには多量の水が必要である。日本は外国から大量の食料を輸入しているから、それはすなわち外国の農地で使用される水、バーチャルウォーターの消費に責任がある。
先進国が森林伐採などして降雨が減少しているので責任あり=10点、援助する責任がある=0点
5.雑多なプラスチックごみを収集した場合、マテリアルリサイクルを目指すべきか、サーマルリサイクルを目指すべきか。ふたつのリサイクルがそれぞれどのような方法か説明した上で、環境負荷を低減するためにはどのような条件がふたつの方法の選択に影響するか解説せよ。(20点)
[回答例]マテリアルリサイクルとは、廃プラスチックを細かく砕いて再び原材料として使用すること。サーマルリサイクルとは、廃プラスチックを燃料として燃やして、熱を発電や加温に利用すること。
マテリアルの場合、回収した廃プラのすべてが利用できるわけではないので、廃棄せざるを得ないものがどれだけ出るかで効率が変わる。サーマルではほぼすべての廃プラが選別なしで使えるので、廃棄量は最少になるが、当然CO2は排出される。CO2削減と廃棄量のどちらを優先するかで選択が異なるだろう。
サーマルはゴミを焼却してXX=2点、LCAでエネルギーを考える=5点、サーマルリサイクルはCO2を排出=3点、マテリアルは分別が面倒=3点、分別のしやすさ=5点、マテリアルは余計な資源を使ってしまうかも知れない=2点
6.海に流出したごく低濃度の汚染物質が、大型の魚類や鳥類・哺乳類の体内から高濃度で検出されることがある。このような現象をなんというか。どのような特徴を持った化学物質がこうした現象を起こしやすいか。海と陸ではどちらでこの現象が起きやすいか、その理由とともに答えよ。(15点)
現象名:生物濃縮(5点)
起こしやすい物質の特徴:脂溶性、難分解性(5点)
起きやすいのは海か陸か:海。食物連鎖の段階が多いほど濃縮が進むので。
海だけ=2点。海に多少不正確な説明=3点、食物連鎖の説明=5点、陸から川に入り海に集まるから=3点
7.大量生産、大量消費、大量廃棄のサイクルを高速で回すことで経済成長できるとする考え方があるが、このようなシステムが現実には持続不可能である理由を説明せよ。
[回答例]大量生産するには大量の原材料が必要だが、持続的に供給できる資源は多くはなく、非持続性の資源はいずれ枯渇する。また大量廃棄すれば廃棄物が溜まり、廃棄場所の不足や環境の汚染などなんらかの問題を起こすことは明らかである。廃棄物をリサイクルして原材料にすれば循環する面はあるが、そのプロセスを動かすエネルギーが非持続的であれば、そうした循環サイクルも持続不可能である。
循環のエネルギー、資源枯渇、廃棄物蓄積のどれかがあればOK
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■■珍答・誤字集■■組式(そしき)、環鏡、温援化、漠膜化、無騒に(むやみに)、人間費(じんけんひ)、不の連さ 学生の間違いを笑いものにするな、という指摘が以前あったのだが、こういう間違いは人に笑われて恥ずかしく思うべきである。恥ずかしいと思わなければ正しい知識(当然身につけていて当たり前のレベルの)に修正するチャンスを失うことになる。だからみんなで笑ってやろう。 |