1. 地球誕生以来、地球の平均気温は何度も大きく上下してきた。にもかかわらず、現在上がりつつあることがなぜ特別に問題視されているのか、説明せよ。(10点)
[回答例]氷河期が終わって間氷期に入り人の文明が始まった約1万年前からだけを考えれば、この間の気温の上下は非常にわずかであり、人間社会は基本的にそうした安定した環境で発展してきた。つまり、地球という惑星にとっては気温の急激な上昇もありふれた現象かも知れないが、人間社会にとっては前例のない大きな変動だから問題なのである。(10点)
【コメント】「過去は自然現象だが、今回は人為的な原因だから。」「スピードがかつてなく速い。」といった回答はともに5点
2. 短期間で大きく育つケナフは地球温暖化防止になる、ということで、全国の小学校でケナフを栽培する計画が持ち上がったとする。この計画が本当に温暖化防止に多少なりと効力をもつか、論評せよ。(10点)
[回答例1]効力を持たない。成長するときはたしかにCO2を吸収するが、冬になり枯れて燃やされればCO2は排出され元に戻ってしまい、削減にはならないから。
[回答例2]効力を持つ。育てたケナフで、今まで木材から作っていた紙を作るようにすればCO2の削減効果がある。
【コメント】カーボンニュートラルについて理解できていないことが明らかであればmax5点とする。他に、「啓発効果はある」「栽培・輸送にもエネルギーを消費しCO2を出す」といった回答のみなら5点。
3. 大量生産−大量消費−大量廃棄という一方通行の社会は、いずれ大きな問題に直面し継続不可能となる。どのような問題が起きうるか、2つの側面を挙げよ。(10点)
[回答例]資源を製品に変え消費するばかりではいずれ資源が枯渇する。また廃棄したものは、そのまま山積みになればいずれ処分に困り問題を引き起こすし、燃やせばCO2増加で温暖化を引き起こす。
【コメント】資源の枯渇と廃棄物の増大、どちらか一方なら5点。
4. すべての廃棄物がリサイクルされるようになれば、完全な循環型社会になる。そのような社会は、人々の協力とリサイクルの技術開発次第で実現可能だろうか。解説せよ。(10点)
[回答例]廃棄物をリサイクルするには必ずエネルギーが必要だが、そのエネルギーを生み出すのに少なくとも現在はCO2や放射性廃棄物などどうしようもない廃棄物をつくり出してしまうので、つまり廃棄物をなくすことができず、完全な循環型社会はあり得ない。
[他の回答例]「完全に循環できても、人口は増えているからいずれ足りなくなり追加の資源が必要(10点)」「LCAで考えればリサイクルが環境負荷を下げるとは限らない(10点)」「100%元の状態に水平リサイクルはできない(5点)」「廃棄物をリサイクルするときにさらに廃棄物が出る(3点)」「コストがかかりすぎる(3点)」「原子力発電の廃棄物はリサイクルできない(3点)」
5. ダイオキシンは『史上最強の毒物』といわれたが、一方で日常における健康へのリスクはタバコの喫煙より低いという。この一見矛盾した関係はどういうことか説明せよ。(ダイオキシンの毒性がきわめて高いことは事実とする。)(10点)
[回答例]ダイオキシンの毒性は高くても、摂取量はわずかである。タバコに含まれる有害物質の毒性がダイオキシンより低くても、摂取量は喫煙者・間接喫煙ともにはるかに多い。リスクは毒性と摂取量の積で決まるため。
【コメント】ポイントは『毒性』と『摂取量』について記述があること。「タバコは直接吸い込むから」「ダイオキシンは減っている」などは相対的な量の多少について記してないので5点未満。
6. 古代文明が栄えた地の多くが荒野と化している。文明が土地を荒廃させていく過程を、順を追って説明せよ。(10点)
[回答例]文明が興ると人が集まり、増えた人口を養うため周辺の森林が伐採され農地が拡大される。土地が限界まで酷使され,農耕地の生産性が落ちるとさらに農地は拡大されていくが、やがて使える土地がなくなり食料生産が追いつかなくなったとき、文明は滅び荒れた土地が残される。
【コメント】ポイントは人口増加、食料生産、森林伐採と土地の酷使について記述があること。水だけ、森林伐採だけ、家畜だけの記述ではそれぞれ4点程度。
7. 朝起きてシャワーを浴びトーストを食べ、バイクで最寄り駅まで行って駅のコンビニでペットボトル入りのホットコーヒーを買ってから電車に乗って登校した。この生活の一コマで、どの行為のどのような面が温室効果ガスを排出する原因となり得るか、説明せよ。(計40点)
[回答例]シャワー=温水を作るエネルギーの消費; トースト=パンを焼くトースターのエネルギーの消費; バイク=ガソリンの消費; コンビニ、コーヒー=店舗の電気、コーヒーの加温、商品の生産と配送のエネルギー消費; 電車=電気の消費 などなど。
【コメント】1つ8点を基本とし、5つあれば満点とする。簡単すぎるボーナス問題のつもりだったが、案外わかっていない人が多くて驚いた。
講評
授業の終盤になって、「この授業の到達目標」というものを配布した。「〜について説明できる。」という風に、授業の最後の段階でこれが説明できるようになっていてほしいという項目を22個挙げた。授業というものは、到達目標があって、そこまでの到達度合いによって評価が決まる。当たり前といえば当たり前だが、それを具体的に明示的に受講者に示すというのは今回が初めて。期末試験に出した問題はほとんどその目標に書いたものである。模範解答は示していなかったので、ヤマが当たっても正解はできなかったかも知れない。ただ、この22個に限定したりすると、次年度からとにかくそれに対する模範解答を求めるようになるだろうから、そこのところをどうしたものか、思案中。
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■■珍答・誤字集■■温質効果 徴力 景響 材量 引くい 換りかえし(くりかえし) 森林伐培 温窒効果ガス 効化がある 焼量(燃料) カーボンディーゼル(ニュートラル) 不安低 変下 光合生 不担 間評期 壊境(環境が壊されるのね。わかります。) 土譲 焼やされる 森林閥裁(また難しい字を…) ペットボトルを廃発 家伐採・家放牧・家耕作(過伐採・過放牧・過耕作) 廃棄ガス パンを燃く 家蓄の放牧 食料困難(?) CO2は吸収能力が高いので環境教育によく使われるし核材料にもなる。 草木からはオゾンが出て多少の温暖化防止にはなる。 紫外線によって海水が膨張する。 ペットボトルを作るのにたくさんの木が使われている。 ダイオキシンの毒性を生かして環境保全や食料の質を高めるために使われる。 学生の間違いを笑いものにするな、という指摘が以前あったのだが、こういう間違いは人に笑われて恥ずかしく思うべきである。恥ずかしいと思わなければ正しい知識(当然身につけていて当たり前のレベルの)に修正するチャンスを失うことになる。だからみんなで笑ってやろう。 |