1.タイムマシンで過去の特定の時代の地球の大地に降り立つことができたとする。次の質問に答え、その根拠を説明せよ。(各5点)
(1) 30億年前に到着してマシンから降りて深呼吸した。何が起きる?
(2) 10億年前に到着して食料になりそうな生き物を探した。どんなものが獲れる?
(3) 1億年前に到着して人類を探した。見つかる?
(1) 窒息する。まだ大気中に酸素がほとんどないから。酸素が大幅に増加するのは20億年前あたりから。
(2) 単細胞生物が海の中にいるだけなので、いずれもきわめて小さく、ほとんど食料になりそうなものは見つからない。多細胞生物が出現するのは先カンブリア紀の末期、6億〜5億5千万年前あたりである(たとえばエディアカラ生物群)。
(3) 見つからない。人類登場は約500万年前である。なお、「人類の祖先は見つかる」という回答はどの時代であっても当然真なので認めない。
【コメント】(1)に対する珍答として、酸素が薄いので身体が軽くなるとか爆発するとかいうのがあった。「酸素がない」→「宇宙と同じ」→「無重力・真空!」という連想だろうか。
2.次の文章の間違いに下線を引き、正しく修正せよ。(10点)
DNAは糖とリン酸と20種類のアミノ酸からなる高分子で、アミノ酸3つが1組として1つのタンパク質に対応する暗号(コロン)となる。
正しい文章は、「DNAは糖とリン酸と4種類の塩基からなる高分子で、塩基3つが1組として1つのアミノ酸に対応する暗号(コドン)となる。」1箇所につき2点配点。
3.シャクガという蛾は、工業化により周囲の木の地肌が白色から黒色に変わったのに伴い、羽の色を白色から黒色に変えたという。この蛾の羽の色の変化が自然選択による進化であることを示すには、どのようなことを実験で示さねばならないか。具体的に説明せよ。(15点)
自然選択による進化の3つの条件「形質のばらつき」「形質の遺伝」「形質と適応度の相関」を示す。この場合の形質とはシャクガの羽の色。「形質のばらつき」は、個体によって羽の色にばらつきがあった、すなわち白い個体と黒い個体が存在していたということで、過去に集められた標本などを調べることで示せる。「形質の遺伝」は、羽の色が親から子へと遺伝する形質であることで、白い個体と黒い個体それぞれをかけ合わせて子の羽の色を調べることで示せる。「形質と適応度の相関」は、工業化した環境の中で羽の色によって残せる子孫の数に違いがあることを実験で示す。具体的には、白い個体と黒い個体の標本を木に固定し、捕食者(鳥)にどちらが食べられる確率が高いか示したり、白黒同数の個体を放してどちらが長く生き残るか・どちらがたくさん卵を残せるか追跡調査する、などの方法が考えられる。
【コメント】具体的な方法を答えるのは難しかったかもしれない。「木の地肌の色を他の色に変えて、それに対応して羽の色が変わるか見てみる」というような回答が多かった。これは実験的に進化させてみるという方法であり、白から黒への過去の変化が偶然の産物ではなかったことを示すにはひとつの有力な方法であるが、メカニズム(自然選択)を明らかにするには不足であるし、そもそも相当に長い時間がかかる話ではある。
4.多くの鳥類のオスに見られるきれいな色や羽飾りは、メスに対するアピールのために使われる。
(1) なぜオスがアピールする側なのか、その理由を説明せよ。(10点)
(2) では、ある種の鳥では逆にメスがきれいでアピールする側になっている。この場合の理由を推察せよ。(10点)
(1) オスは1個体が何羽ものメスと交尾・授精することができるので、基本的にオスが足りなくなることはない。つまり精子は卵子の数より圧倒的に多く、メスの方が希少資源であり、希少なメスの側が有り余るオスの中から選ぶ権利を持つ。選ばれるためにオスは必死にアピールする。
(2) 上記の理屈から言って、メスがアピールするならばオスの方が希少資源となっているはずである。このような場合、オスが子育てに大きく貢献し、優秀なオスなしにメスは子孫を残せないケースであると推察できる。
5.無条件に仲良く助け合う関係というのは美しく素晴らしいものだが、進化的観点で見るとひどく不安定な関係である。なぜか。またその関係を安定させるためには、どういう助け合いの関係でなければならないか。説明せよ。(20点)
見境なく相手を助けるメンバーの中にひとり助けない利己的なメンバーが侵入すると、利己主義者は犠牲を払うことなく他のメンバーの助力を得て利益を独り占めするので、利他的な集団は利己主義者の侵入に弱い。安定化させるには、お互いが相手を助けることで実は利益を得ているという利己的な助け合いであることや、助けないメンバーには罰則があるような仕組みが必要である。
6.絶滅に瀕する生物は、集団中の個体数がある程度少なくなると、そこから加速的に減少に向かうという。その理由を説明せよ。また、簡単に増やすことはできないとして、そうした小集団の生物の絶滅を少しでも回避するにはどんな対策が考えられるか。(20点)
集団中の個体数がある程度少なくなると、近親交配が起こりやすくなり近交弱勢により生存力や子どもの数が減少しやすくなり、また偶然の力が大きく影響するようになってオスとメスの比率や生存率のぶれが作用する。また大きな環境変動などが取り返しのつかないダメージを与えることにもなる。こうした小集団の問題を回避するには、回廊などを作ることによって小集団同士をつなぐことが最低限必要になってくる。