2014年春期 自然科学(生物学1)
期末試験 問題と解答


1. 生物の遺伝の分子メカニズムに関する以下の記述について、下線を引いた単語が正しければ丸を、誤りであれば正しい単語をカッコ内に記入せよ。(15点)

  DNAには4種類あって、3つ一組で遺伝子と呼び、これがひとつのタンパク質に対応する。

   ( 塩基 )   ( コドン )   ( アミノ酸 )

【コメント】毎度おなじみの問題。なのに正答率が低かった。過去問くらいチェックせよ。


2. 生命の歴史上、光合成する生物の誕生はきわめて大きな影響を与えた。(30点)
(1)最初に光合成を始めたとされ、現在も存在する生物の名は?  ( シアノバクテリア )
(2)その生物は3つの「界」のうちどれに属するか?   ( 真正細菌 )
(3)光合成が地球環境に与えた影響を2つ説明せよ。
(4)光合成が他の生物に与えた影響を2つ説明せよ。

(3) 酸素を大量に発生させ、それまでほとんどなかった大気中の酸素濃度を高めた。また、成層圏にオゾン層を形成することになった。

(4) (酸素が増えたので)嫌気性の生物を激減させた、酸素呼吸する生物が登場した。細胞内共生して葉緑体になった。(オゾン層ができたので)陸上への進出を助けた、など。

【コメント】(3)は「CO2を減少させた」もOKにした。(4)で「酸素が増えて呼吸ができるようになった」は×。生物学で言う「呼吸」は必ずしも酸素を必要としない、というのは授業でとりあげたはず。


3. ある程度個体数が少なくなってしまった生物集団は、集団サイズが小さくなったこと自体がさらに数を減少させることにつながる場合がある。孤立した小さなサイズの集団がなぜその生物に負の影響を与えることになるのか、3つの要因を説明せよ。(15点)

【回答例】1.近親交配:個体数が少なくなると血縁者間で交配する確率が増え、近交弱勢により適応度が下がる。 2.人口学的変動:生まれる子の雌雄の比率や生存など、確率的な現象は集団が少なくなると振れ幅が大きくなり、偶然に困難な状況が生じやすくなる。 3.環境変動:自然災害など環境変動の影響が、集団が小さいほど致命的になりやすい。

【コメント】遺伝的浮動で有害遺伝子が固定されやすい、(近親交配で遺伝的多様性が減り)寄生者等にやられやすくなる、有利な突然変異が生じにくく進化の機会が少ない、などの回答も、きちんと説明があればOKとした。


4. 「外来種でもたくさんいれば生物多様性の足しになるんじゃない?」と言う人に対して、在来の生態系に外来種が侵入することで生物多様性にどのような問題が起こりうるか説明せよ。(10点)

【回答例】在来種は地域の生態系の中で他の生物と関わり合いながらともに進化してきたものであり、それが地域の生物多様性を構成している。そこに、歴史を共有しない外来種が入り込むと、在来種を捕食したり、餌や住みかをめぐって競合したり、交雑したり、また寄生者や感染性生物を持ち込んだりして、在来種の存在をおびやかし在来の生態系を破壊するおそれがあり、生物多様性にマイナスの影響を与える。

【コメント】外来種が在来種にどのような悪影響を与えるかが書かれていればOK。


5. ハチやアリでは真社会性が他の生物より多く見られるのはなぜか、説明せよ。(10点)

【回答例】ハチやアリのオス・メスは半倍数性で決まるため、母子の血縁度が1/2に対し、姉妹は3/4となる。このため、姉妹間の利他行動が他の生物に比べて起こりやすいと考えられる。

【コメント】「半倍数性」「娘より妹の方が血縁度が高い」というあたりが書かれていればOK。ただし、1/2, 3/4という数字だけあっても全然意味がわかっていないと見られる場合は減点している。しかし、「女王と働きアリ・ハチからなる社会だから」という回答が多かった。なんでそういう社会になっているのか、という問題なんだが。


6. ゾウアザラシのオスは体がメスよりはるかに大きく、コクホウジャクのオスは尾羽がメスよりはるかに長い。しかしこれらの種の性差はそれぞれ異なる理由で進化したと考えられている。推測される理由をそれぞれ説明せよ。(10点)

【回答例】ゾウアザラシのオスは、他のオスと争い、勝者が多数のメスを有するハーレムを独占する。他のオスと戦うためには体が大きい方が有利なので、オスだけが大きくなるよう進化した。一方、コクホウジャクのオスは、尾羽が長いほどメスにアピールできメスに選ばれる。メスによる選り好みがあるため、オスの尾羽が長く進化したと考えられる。

【コメント】ゾウアザラシについてはビデオに出てきただけなので、別の理由を推測した場合もOK。たとえば、メスや子を守るため、など。オスだけが大きくなる理由が書かれていなければ×。


7. 悪事を企むことにかけては天才的な男ミスターX(80歳)が、自分の細胞からクローン人間を20人作って自分とともに悪の計画を実行させ、世界征服をしようと狙っている。生物学的に見てこの計画の根本的な問題点をいくつか指摘せよ。なお、ここでは人間のクローン化は技術的には問題なくできると仮定し、代理母の胎内で育てるものとする。(10点+ボーナス点あり)

【回答例】(1)クローンは赤ん坊として生まれてくるので、助手にできるまで育てるのに15〜20年かかる。それまでにミスターXはおそらく死んでいるであろう。(2)生まれたクローンがミスターXと同じように悪事の天才に育つとは限らないし、言うことを聞くとは限らない。能力は遺伝子と環境の両方の影響を受けるから。その他に、ミスターXと同じようにクローンも全員利己的だろうから協力が成り立たない、老いた細胞由来なのでクローンも寿命が短い、思考に多様性がないのでうまくいかない、感染症などにかかると全員全滅する、などの答えもOKとした。

【コメント】上記の(1)と(2)が期待した回答。どちらかひとつあれば10点。あとはどれでも+5点とし、上限20点までとした。




<誤字コーナー>

、葉体、近交配、新親交配、近交弱勢弱親近弱性気生物、増
元子(元素)、盤基(塩基)、全絶(全滅)、コタン(コドン)、真生細菌・直正細菌(真正細菌)
シアコンドリア、シロノバクテリア、シアノティクラ、ピカデリア、バクテリアン (シアノバクテリア!)
メダリア生群、アシディアス生物郡 (エディアカラ生物群と言いたかったのかな…)


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2014. 8. 10.